「伝わらない」は、あなたの考えが悪いせいではない
仕事でも、プライベートでも、誰かに何かを伝えることは毎日起きます。
上司への報告メール、チームへの共有メモ、SNSへの投稿、友人に送るおすすめの情報——。どれも「伝えたいこと」があって書いているはずなのに、なぜか思ったように伝わらないことがありませんか?
そのとき多くの人は「自分の説明が下手なのかな」「もっと詳しく書けばよかったかな」と考えます。でも実は、原因はその逆にあることが多いのです。
書きすぎているから、伝わらない。
人間の脳は、テキストより「見たもの」を優先する
同じ内容が書かれた2つのメッセージがあるとします。一方は文章だけ。もう一方は、短い文章と1枚の図。どちらが瞬時に理解できるでしょうか?
答えは明らかです。
人間の脳が処理する情報のうち、約80〜90%は視覚情報と言われています。文字を「読んで理解する」プロセスは、実は脳にとってかなりコストのかかる作業です。一方、図や写真は見た瞬間に意味を捉えられます。
この違いが、情報量の差として数字に表れています。
| 情報の種類 | テキストとの比較 |
|---|---|
| テキスト(文章) | 基準(×1) |
| 画像(静止画・図解) | 約7倍 |
| 動画 | 約5,000倍 |
なぜ動画は「5,000倍」なのか——Forrester Researchの研究
動画の5,000倍という数字は、アメリカの市場調査会社 Forrester Research のアナリスト、James L. McQuivey 博士の研究に基づいています。
博士は著書 “How Video Will Take Over The World”(2008年)の中でこう述べています。
「1分間の動画は、180万語分のテキストに相当する情報量を持つ」
180万語は、一般的なWebページ換算で約3,600ページ分。これを1分間で読むことは不可能ですが、動画ならその情報量を直感的に届けられます。
計算の仕組みはシンプルです。「1枚の画像=1,000語」という概念を出発点に、動画は1秒間に約30フレーム(コマ)で構成されているため、30,000語×60秒=180万語という数字が導き出されます。
もちろんこれは比喩的な計算ですが、動画が映像・音声・動き・表情・テロップ・テンポといった複数の情報を同時に届けられることは、テキストや静止画には真似できない強みです。
これは特別な場面の話ではない——日常のあらゆる伝え方に当てはまる
「ビジュアルを使う」と聞いて、特別な場面を思い浮かべる必要はありません。
人に何かを伝える場面は、毎日の生活の中に無数にあります。
📧 メールや社内チャット AとBとCの違いを長文で説明するより、簡単な比較表を1枚貼るほうが、読む側の負担は激減します。「読んでもらえないメール」の多くは、情報量ではなく見た目の問題です。
📝 報告書・議事録・メモ 文章で経緯を書き連ねるより、時系列の図や箇条書き+図解を組み合わせるだけで、「読まれる資料」に変わります。
📱 SNSやブログの投稿 テキストだけの投稿より、図解や写真を添えた投稿のほうがエンゲージメントが高くなるのは、視覚情報の優位性がそのまま働いているからです。
💬 日常の説明・相談 口頭での説明に、手書きの簡単なスケッチを1枚加えるだけで、相手の理解度は大きく変わります。往復するやりとりが、一度で終わることも珍しくありません。
📂 自分自身のメモや記録 他者への伝達だけでなく、自分のためのメモにも同じことが言えます。図やフローで整理したノートは、後から読み返したときに圧倒的に使いやすくなります。
「ビジュアルで伝える」を日常の習慣にする3つの視点
1. まず「絵にできないか」を考えてみる
何かを伝えようとするとき、最初に「これは図にできないか?」と自問する癖をつけましょう。
フロー、比較、数値の変化、関係性——これらはほぼすべて、テキストよりも図のほうが速く正確に伝わります。手書きのラフスケッチでも、スマホで撮影して送るだけで十分です。
2. テキストは「補足」と割り切る
書きたくなる衝動はよくわかります。でも、テキストはあくまで図や画像の「注釈」程度に留めるのが理想です。
詳しい説明は、受け取った側が「もっと知りたい」と思ったときに補足すれば十分。最初から全部書こうとしないことが、「伝わる」への近道です。
3. 動画は「難しいもの」ではない
動画と聞くと「編集が大変そう」と感じるかもしれません。でも、スマホで撮った1分の説明動画や、画面録画で操作手順を見せるだけでも、長い文章マニュアルより圧倒的に伝わります。
日常の共有場面では、「完成度の高い動画」よりも「すぐ見られる短い動画」 のほうが価値があることが多いです。
今日から使えるセルフチェック
何かを誰かに伝えようとするとき、次の問いを習慣にしてみてください。
- これは図や表で表現できないか?
- テキストの量は本当に必要最小限か?
- 写真や画像を1枚添えるだけで伝わらないか?
- 短い動画や画面録画のほうが早く伝わらないか?
- 受け取った相手が「読む」より「見る」だけで理解できるか?
まとめ:伝え方は、センスより「視点」
「うまく伝えられない」と悩む人の多くは、センスが足りないのではなく、テキストに頼りすぎているだけです。
- 画像はテキストの 約7倍 伝わる
- 動画はテキストの 約5,000倍(1分間で180万語相当)伝わる
この数字は、特別な場面だけでなく、日常の報告・連絡・相談・発信・記録、すべてに当てはまります。
「もっと詳しく書かなきゃ」ではなく「これを一枚の図にできないか」——その小さな視点の転換が、あなたの日常の伝え方を根本から変えてくれるはずです。